Mouts Myaa Murmur

ハローインターネッツ、フロムヘル

もうそれでいい


前に進んでいるという実感がおれを前に進ませている気がする

おれたちはいつになればフェスに出れるのだろうかと
去年まで抱えていた頭はどこへやら
今年はなんとかそういった機会に恵まれた
例えばお客さんの反応であったり
例えば出演者との邂逅であったり
そういうものひとつひとつが、
少しずつ前に進めていることを教えてくれる

牛歩だろうが構わない
前にさえ進めていれば、いつかは辿り着くよな

おれはもう疲れた
疲れている日々に疲れた
輝かしく愚かしい毎日に身を投げることに
躊躇しない人間になりたかったんだよな

バンドは楽しい
おれがおれをロールプレイしているような感じだ
今日はもう寝るまでConvergeしか聴かない
おれはもうそれでいい

あとは祈りと


高速道路の上を命が走っている
多分、おれはそこらにいる人たちよりも高速で動いている時間が長い
もしかすると少しだけ
ほんの少しだけ人よりも時間の進みが遅いかもしれない
人生にほんの少しのウラシマエフェクト
きっとそんなことは無いだろうけど

さて、最近はどうですか?
おれは少しずつ見えてきた
何がというわけではないが、ふわふわとした生活の中に
失望をわざわざ拾い集めるような日々に
少しだけ何かが見えてきた
何かなんて知らんが、掴んでから考える

怒りと妬みと反吐と糞尿と空腹と憎しみと
あとは幸福で世界は出来ているとかな
けれど世界は美しいし、人生はかくも素晴らしい

自分の幸せも認識出来ないほど愚かではないのです
あとは祈りと、あれだって言うよな

生活


職業柄、国内であるが色々な場所に行くことが多い
職業柄と書きたかっただけ
まだ職業とは言えないか

色々な場所には色々な物があり、色々な人がいる
その地域にはその地域の人たちがいて、その地域の空気がある
生活がある

自分の住んでいる場所から離れた所にある「生活」は、
とても違和感があったりする
コンビニひとつとってみても、記された銀行の名前が違ったり
駐車場が異様に広かったり、狭かったり
そもそも見たこともないコンビニがあったりする
そういったものがおれにはとても不思議に感じられたり、
違和感を感じたりするが
いつもスルーされている
その場所において、それが当然のことだからだ
そういうものがとても楽しい

「少しだけ違う」や「少しだけ不思議」はいいよな
藤子不二雄先生にとってのSFのような
おれはそういうものがとても楽しい

閑話休題

日々は濁流のように流れている
おれは別にどうということはない
主義もなければ主張もない
ただ好きでありたいのだ

おれには別になにもない
同じようになにもないやつらにとって
何かでありたいかもしれない
ルーザーのままでどこまでいけるか

そんな感じです
君の調子はどうだよ

風通し


自分のことすらもよくわからないのだ
他人のことをどうこう言える筈もない

けれど、話をしながら徐々に輪郭がはっきりとしてくる
自分が考えもしなかった自分のことが見えて
少し風通しが良くなったな
なんて感じることがある

天気が良い日はとにかく窓を開けてしまいたくなるな

今の家はそうでもないんだけど
ずっと住んでいた実家は田んぼに囲まれていたものだから
もうこれくらいの季節になると、蛙がうるさくて
窓を開けてなんて寝られたものじゃなかった

今の部屋は線路のすぐ側なので
始発電車の音に起こされてしまう
しかし、不思議とそれにも幸福を感じてしまっている気もする

風通しは良い方がいい
とにかく窓は開けてしまおうかな

飲み込むための時間


レコーディングが続いている

少しずつ状況が進んで、少しずつ環境が変わって
関わる人の数も増えて、おれは別に何もない
なにかきっかけがあって劇的に変わるようなこともない

何処までも地続きだ
時間が要る、飲み込むための時間が

少しずつフェスにも呼ばれるようになった
憧れだった人が目の前にいることが増えた
マネージャーの仕事が増えた
でもおれは別に何もない

何処までも地続きだ
時間が要る、飲み込むための時間が

不安の絵


体調が少しは良くなったかと思えば、ライブにライブを重ねる日々
地元で企画、次の日には700km離れた場所で少し大きなイベント
色々な場所に呼ばれるようになって嬉しい限り
とはいえ疲れは取れないな

高速道路の上で流れ星を見た
なんか嬉しくなっちゃったな
おれはいつまでも子供みたいなままで生きてる気がする
周りの人を見ると、
どうしてみんなそんなにもしっかりしているのかと不思議に思う
いつからそんなに立派になれたんだ

自転車操業みたいに
不安に不安が塗り重なって
いつかしわ寄せが来るような気がして
おれはとても怖い

でもまあいいか、なんとかなるか
なんて思ってしまってもいる
よくわからんな
今はとにかく長く寝たほうがいい

もう少し経てばまた700kmを運転することになるのだが
何を聴こうかな
何を考えようかな
どうにか少しでも楽しく過ごせたらいいな


高熱の街



体温が四十度を超えたのは何年ぶりだろうか
死ぬかと思った、まじで

身体の色んなところが痛いもんだから、寝ることも出来なかった
しんどい状態を「しんどい」と認識し続けること以外できなかったな
その間はずっと目をつむっていて
ずっとなにか、半透明の箱のようなものがたくさん見えていた
身体のように連なっていた

その箱はくるくると回って、なにかの形を成そうとしていた気がする
それを想像していたわけではなくて、
それが見えてるのが当然だという感じだった気がする
パズルゲームみたいに、「どうしようかな」なんて考えていた
今思うとよくわからないな
攻略法のようなものがあると思っていた

深夜から朝にかけてが一番つらかった
眠いのに眠ることもできない
身体中の痛みとベッドごと傾けられているような気持ちの悪い浮遊感
朝までその感覚を感じながら、
相変わらず瞼の裏では半透明の箱を回していた

その頃にはもう箱はよくわからないほどの量になっていて
身体のようだったそれは大きくなって、
街みたいになっていた
外はもう朝になっていた

おれも何だったのかよくわからないけど、
そのときはひとつも不思議に思わなかったな
懸命に半透明の箱を回していた
高熱の街を敷いていた